今回は、いちじくをテーマに、
栄養素やドライいちじくとの比較、
便秘等への効能・効果や
甘露煮など、美味しい食べ方についてご紹介します。

いちじくの歴史

いちじくは不老長寿の果物として知られています。

クワ科の植物で
和名を「イチジク」といいます。

6月下旬~8月上旬に旬を迎える夏果と、
8月~10月中旬に旬を迎える秋果があります。

いちじくの原産地はアラビア南部。

その歴史は長く、
いちじくの栽培は、
なんと6,000年以上前から
始まっていたとのだとか。

旧約聖書を紐解くと、
アダムとイブが自分たちが裸であることに気づき、
いちじくの葉で作った腰ミノを身につけた
旨が記されています。

いちじくは、その味わいや糖度の高さから、
古代ローマでは甘味源としても
重要視・重宝される存在だったようです。

いちじくが日本に渡ってきたのは、
日本には江戸時代初期。
ペルシャ(現在のイラン)から
中国を経て、長崎に伝来したと
言われています。

いちじくの栄養素と効能効果は?

古来から人にとって
身近な存在であったいちじく。

それは、
いちじくが持つ豊富な栄養素や
効能効果とも無関係ではないでしょう。

いちじくには、水溶性食物繊維のペクチンの他、
カリウム、カルシウム、
マグネシウム、鉄(鉄分)等の
ミネラルが豊富に含まれています。

それだけではありません、

女性ホルモンに似た働きをする
植物性エストロゲン、
たんぱく質を分解する酵素フィシン、
さらには、
ポリフェノールの一種であるアントシアニンも
含まれています。

では、それぞれ
どのような効能や効果があるのでしょうか。

水溶性食物繊維(ペクチン)

■善玉菌のエサとして機能
⇒ 便通を整えて便秘を予防する働き

■脂質・糖・ナトリウムなどを吸着して体外に排出する作用
⇒コレステロール値や血糖値の上昇を抑制

糖尿病・高血圧など生活習慣病の予防・改善効果も期待できる。

カリウム

■ナトリウム(塩分)を体内から体外に排出
⇒筋肉の収縮、血圧の上昇を防ぐ

■体液のpH値を整え、バランスを保つ
⇒体のむくみ予防

鉄(鉄分)

■赤血球のヘモグロビンに多く存在する物質。吸収率の違う2種類の鉄が存在。
⇒貧血予防
※不足すると貧血を起こすため、積極的に摂る必要がある。他にも鉄を含有する食材として、赤身の肉・魚、野菜や卵などがある。

植物性エストロゲン

大豆イソフラボンのように卵巣ホルモンに近い働きをする植物性の物質。
⇒更年期症状緩和や骨粗しょう症予防
※卵巣ホルモンは、不足すると、更年期障害やPMS(月経前症候群)など女性特有の症状の原因になる。また、骨の形成を活発にする働きをもつため、減少すると骨粗鬆症の原因にもなる。

フィシン

■たんぱく質分解酵素(たんぱく質を分解して消化させやすくさせる働きがあるため、胃の負担が減る)
⇒食後摂取で消化促進、二日酔い予防効果
※アレルギー体質の方には、口内にかゆみや違和感を起こすことがあるので注意が必要。

アントシアニン

■ポリフェノールの一種
⇒抗酸化作用、活性酸素の発生や働きを抑制
※植物が紫外線など有害な光から実(身)を守るために蓄えられる青紫色の天然色素。活性酸素を取り除く物質。大量の活性酸素は、動脈硬化・がん・老化・免疫機能の低下などを引き起こす。
ブルーベリー、ナス、紫芋などに多く含まれている。

いちじくの栄養成分

以下がいちじく(生)の栄養成分です。

—–
いちじくの栄養成分:生(可食部100g当たり/約1個あたり)

カロリー 57kcal
水分 84.6g
たんぱく質 0.6g
脂質 0.1g
炭水化物 14.3g
灰分 0.4g
カリウム 170mg
カルシウム 26mg
マグネシウム 14mg
リン 16mg
鉄 0.3mg
ビタミンB1 0.03mg
ビタミンB2 0.03mg
ナイアシン 0.2mg
葉酸 22μg
水溶性食物繊維 0.7g
不溶性食物繊維 1.2g
食物繊維総量 1.9g
—–
※出典:https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_01110.html
「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」

ドライいちじくの栄養素メリットは?

多彩な効能を持ついちじくは、
ドライフルーツになると
さらにパワーが倍増することを
ご存知でしょうか?

先ほど、生のいちじくの
栄養成分を列挙しましたが、
ドライいちじくでは水分量が減るため、
栄養素が凝縮されます。

具体的には、
生1個(約100g)と
ドライいちじく(約100g)で比較すると、
特に顕著な栄養素で、
以下のような数値を示します。

—–
・カルシウム:約7.3倍、
・食物繊維:約5.6倍、
・マグネシウムや鉄:約4.7倍
—–

ドライいちじくは
水分が抜けているため、
100gあたりの
ドライいちじくと生いちじくで
比較すると、生のいちじくよりも
数値が大きくなるのは
自然な結果と思われるかもしれません。

そこで、
ドライイチジクを1個20g換算で
以下比較してみました。

—–
100gあたり(1個あたり):生いちじく(1個=70gとする) | ドライいちじく(1個=20gとする)
カロリー(kcal):54(37.8) | 291(58.2)
タンパク質(g):0.6(0.42) | 3.0(0.6)
★食物繊維(g): 1.9(1.33) | 10.7(2.14)
鉄(mg):0.3(0.21) | 1.7(0.34)
★カリウム(mg):170(119) | 840(168)
★カルシウム(mg):26(18.2) | 190(38)
—–
※出典:chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/detail/__icsFiles/afieldfile/2016/01/15/1365343_1-0207r2_1.pdf
「日本食品標準成分表2015年版(七訂)-厚生労働省」

ぜひ注目いただきたいのが、
星印をつけた以下項目の数値です。
★食物繊維
★ミネラル(鉄・カリウム・カルシウム)

生いちじくに比べて
ドライいちじくのほうが
約1.5~2倍多く含まれていることが
数値から把握できます。

いちじく食べ過ぎの症状は?腹痛や胃痛も

いちじくに含まれる
水溶性食物繊維のペクチンは、
特にドライいちじくに
豊富に含まれています。

多彩な効果が期待される一方で、
水溶性食物繊維は便を軟らかくするため、
食べ過ぎると下痢症状を起こすこともあります。
腹痛や胃痛を招くこともあるため、
適量にとどめるのが無難です。

いちじくのカロリー過剰摂取にも注意、一日の目安量は?

いちじくのカロリーは
決して低くありません。

特に、
ドライいちじくの
100gあたりのカロリーは
272kcal。

一般的に推奨される
1日の間食は
200 kcalであることに照らすと
100gのドライイチジクは
食べ過ぎになりかねません。

また、
乾燥させ水分を抜くことにより、
ドライいちじくの糖質量は
生のいちじくの5倍以上になる点にも
注意が必要です。

果物に含まれる果糖は血糖値を上げないため、
太りにくい糖質と言われることもありますが、
これらは、肝臓で代謝されます。

このため、
果糖を多く摂るほど、
肝臓に負担をかけ
肝脂肪の原因になり得ます。

いちじくだけでなく、
ほかの間食をとること、
また一日の全体の食事バランスも考慮の上、
摂取量を調整するのがよいかと思います。

いちじく甘露煮レシピと作り方

いちじくは、
生やドライも良いですが
甘露煮にしても
とても美味しく頂けます。

いちじく甘露煮の材料

—–
・いちじく:4〜5個(約350g)
・砂糖:100g
・水:400ml
・レモン汁:大さじ1と1/2
—–

いちじく甘露煮の作り方

1. いちじくはさっと洗い、水気をふき取って、ヘタをとり除く

2.鍋に水と砂糖を入れて中火にかける

3.煮汁が沸いて砂糖が溶けたら、いちじくをそっと入れる

4.レモン汁を加える

5.落しぶたをして弱火で静かに煮る(約2時間)
※落しぶたは、オーブンペーパーを鍋の形に切り、中央に穴をあけたものを使うとよい
(いちじくは柔らかくなるため、木の落しぶたは重いため)

6.いちじくを煮終えたら、火を消してそのまま冷まし、味を含める。

作った甘露煮は、
冷蔵庫で1週間ほど保存できます。

いちじくの品種豊産性や育てやすさは?

いちじくの旬は、8月から10月。
国内で見かける主な品種には、以下があります。

桝井(ますい)ドーフィン

明治42年に広島の桝井光次郎氏がアメリカから日本に持ち帰った。
樹が管理しやすい。
また、収量が多い豊産性の品種。

いちじくの中では果実の皮が硬め。
輸送性にも優れているため、
日本の市場の約8割を占めるようになった。

ほどよい甘味とさっぱりとした風味があり、
生食のほかジャムなどにも向く。

蓬莱柿(ほうらいし)

江戸時代初期に中国から伝わったといわれる品種。

明治時代にアメリカから導入された
桝井ドーフィンと区別する意味で、
蓬莱柿を在来種として
「日本いちじく」と呼ぶこともある。

西日本を中心に定着、長く栽培されてきた。

適度な甘味とほのかな酸味があり
上品な味わい。

但し、実の先端が裂けやすく
日持ちが悪いことおあり、
関東方面ではあまり出回らなかった。

とよみつひめ

福岡県で生まれ、
平成18年に品種登録されたいちじく。

最大の特徴は甘さで、
糖度が17度にもなる甘味の強い品種。

果皮は赤紫色の鮮やかな色合い。
果肉は肉厚で、
豊かな果汁となめらかな食感が特徴。

多彩な海外品種には極甘品種も

日本の園芸店で見かける
いちじくの品種は、わりと限定的な印象ですが、
海外でには多彩な品種のいちじくがあり、
その中には糖度が25度を超えるなど、
もはやお菓子に近い
甘さを示す品種もあります。

果肉が白色系の品種もあり、
皮ごと食べることができる
ものもあります。

但し、難点があり、
輸送時に傷みやすく、
生ものであるため、
あまり市場に出回らないこと。

ブルンスウィック、
ビオレッタ、
ホワイトマルセイユ
ポルトゲス、
アーチペル、
シュガー、
リサ、
ラッタルラ
・・・

しかし、
それら海外品種を
国内に導入して
育てている方がいらっしゃいます。

例えば、
まるはち果実園さん。

多品種のいちじくを栽培されており、
NHKの番組
Trails to Oishii Tokyo.
の撮影でもカフェが登場するなど
注目されています。

今は視聴できなくなったようですが、
Youtubeの食べ比べの動画にて
桝井(ますい)ドーフィンを含む
幾種類かのいちじくを
実際に並べながら
切り口や味わいを解説下さっていました。

大きさも色も形も様々で
個性豊かないちじくの世界。

一歩、その世界に踏み入れると
育てて味わう楽しみが広がり、
その奥深さにも、
気づかれるのではないでしょうか。

いちじくは果実の木でありながら、
鉢管理による栽培も可能で、
野菜のように、日々の収穫を
楽しみ、かつデザートのように
フレッシュな香りと味を楽しむこともできます。

始めての方でも
わりと手軽に栽培できたりしますので、
ご興味があられるようでしたら
ぜひお試し下さい。

最後に

いかがでしたでしょうか。

今回は、
いちじくの栄養素や効能、
美味しい食べ方や留意点等について
様々な角度から眺めてみました。

いちじくは
豊富な栄養素を含んでおり、
特にドライいちじくでは
栄養素が凝縮されています。

このため、
効能が期待できる一方で、
カロリーも高く、食べ過ぎると
胃腸が緩くなることもあるため、
適量摂取を意識することが
重要になります。

なお、
いちじくには
多数の品種があり、
まるでジャムのように濃厚な
人気の品種などもあったりします。

以下の記事で
関連情報をまとめていますので、
よろしければご参照下さい。

イチジク品種人気比較!糖度が高く豊産性おすすめは?
いちじくの白い汁とアレルギー痒みの原因と対処は?

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
どうぞ他の記事もごゆるりとお愉しみ下さい。